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【バレンタインSP】レッドホークVSちゅうじ!!
投稿日 : 2008/01/23 04:09
投稿者 レッドホーク ID[0108]
「冒険者日記」で連載中の拙著「エデンシェイド私記外伝」と
ちゅうじさんのブログ「宙印マテリアル」でしか読めない「加工屋日記」
2月のイベントに向けて静かな闘志を燃やす作者の二人が
共同製作でお届けするのはバレンタインデーにちなんだラブストーリー

「エデンシェイド日記外伝:ヘスペリデスの園」

かつて栄えた湖水地方で繰り広げられる物語は悲劇か喜劇か漫才か!?
どうぞ最後までごゆっくりお楽しみください
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Re: 【バレンタインSP】レッドホークVSちゅうじ!!
投稿日 : 2008/05/13 02:29
投稿者 ちゅうじ ID[0117]
【エデンシェイド日記外伝[】〜秘密の花園・3〜

 樹上に小鳥の声がする。つられて梢のほうを振り仰ぎ、その上の四角く切り取られた
空を、蔦に覆われた石壁を、緑深く息づく庭を見渡す。名も知らぬ恋人たちが花を
手折り、語り合ったかつての景色を思う。耳に心地良い葉ずれの音。荒れ果てたと
思える庭もよく見れば、慎ましやかな野花があちらこちらに根付いて春を待っている。
移り変わる季節の中で連綿と受け継がれる命。散りゆく悲しみがあればこそ、花開く
喜びもあるのだろう。
「この城で唯一、魔力に侵食されることなく残されたこの庭は、あの魔道士に残された
最後の心の象徴と言えるかもしれない。彼女はその心に、永遠までも寄り添うことに
したのだ」
 そう言ったレッドホークさんの横顔は、安堵しているようでもあり、惜別のようでも
あり、また……彼女の決断を羨むかのようにも見えた。

 彼がその胸に抱いている孤独の深さを僕は知らない。
 僕たちは誰も、誰かの虚無や不安を、焦燥を渇仰を、欠落を、喪失を――肩代わりも
できないし、完全に埋められもしない。ただ僕たちにできることは……
「レッドさん、何か一言忘れてるぜ」
 庭から出ようと歩き出したレッドホークさんの前に、忠兵衛さんが笑みを含んで
立ちふさがる。レッドホークさんは軽く眉根を寄せて考える仕草。
「迷惑をかけてすまなかった」
 忠兵衛さんが首を横に振る。答えを否定され、レッドホークさんは腕を組んで
さらに考え込むと、少し言いにくそうに視線を外した。
「ありがとう、か?」
「それも違うよ、なぁ?」
 僕は忠兵衛さんの隣に並んで立ち、レッドホークさんに向き直る。
「わかんないならこっちから先に言おうか?」
 彼に望む言葉はただひとつ。僕たちは声を揃えた。
「おかえり」
 一瞬、虚を衝かれたような表情。次いで、その顔にふわりと広がる柔らかな微笑み。
「……ただいま」

 おかえり、と僕たちは言う。また時に、ただいま、と言う。最後に帰りつく場所は
ここではないかもしれない、僕たちの冒険はまだ終わりも見えぬ途上なのだから。
けれど忘れないでほしい、今ここに共にいることの奇跡を。忘れないでいたい。
セナルスの大地は広く豊かで、ただ通り過ぎてしまうには惜しいほどの輝きに満ちている。

 夜は明ける。
 夜は明ける。
 新しい一日は、いつもここに。


〜ヘスペリデスの園:完〜
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Re: 【バレンタインSP】レッドホークVSちゅうじ!!
投稿日 : 2008/05/13 02:28
投稿者 ちゅうじ ID[0117]
【エデンシェイド日記外伝[】〜秘密の花園・2〜

 氷が解けるようにゆっくりと……彼は目覚めた。静かな呼吸。僕たちに気づいて
いるのかいないのか、立ち上がるとそっと目を伏せ、独り言のように呟いた。
「俺にできることはこれで終わりだ。あなたの鍵は元の場所へ戻しておく。……彼は
きっと見つけるだろうから」
 そして今度はしっかりとこちらに顔を向けた。その頬が濡れているように思えたのは、
木漏れ日が見せた錯覚だろうか。何事もなかったかのように穏やかな眼差し。
「曲折はあったが、落ち着くべきところへ落ち着いたようだ。さあ、セトラへ戻ろうか」
「レッドホークさん……大丈夫なのか?」
 つまりその、いろんな意味で。訊きたいことがありすぎてうまく言葉にならない。
僕が困惑していると、忠兵衛さんがつかつかとレッドホークさんに近寄って、やや
不機嫌な声をかける。
「あんたのことだから、言い訳はしたくないんだろうけどさ。俺たちには訊く権利が
あると思うぜ」
 強気な言葉に、レッドホークさんは僅かに苦笑した。
「恋人に逢いたいという女性に、体を貸していただけのことだ」
「そんな説明でわかるかっ! 恋人? この荒れまくった庭に誰かいるってのか?」
「いた、と言ったほうが正しいのか……いや、まだ彼が帰ってくる可能性もなくはない」
 彼の口調はまるで午睡の夢を手繰り寄せるように、いつになく頼りない。僕たちへの
説明というよりも、自らの言葉をひとつずつ確かめるようにゆっくりと重ねていく。
「……彼女はただ、彼の心を取り戻したかっただけなのだろう。けれど俺の力では、
彼を助けることなどできなかった……いや、彼はもう誰の手も届かないところへ
呑み込まれてしまったのかもしれない。人知を超えた力と引き換えに」
 それはもしかして、暗黒魔道士のことを言ってるのか? 断片的なキーワードから
話に追いつこうと必死になっていると、レッドホークさんは懐から折りたたまれた
紙片を取り出した。
「それでも彼女は待つことにしたのだ、この場所で……。ちゅうじ、偶然にもお前が
持っていたこの手紙が、彼女に最後の希望をもたらした。彼の真情が綴られたこの
短い手紙を、いつか彼がこの庭へ戻ると信じる拠り所として」
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Re: 【バレンタインSP】レッドホークVSちゅうじ!!
投稿日 : 2008/05/13 02:27
投稿者 ちゅうじ ID[0117]
【エデンシェイド日記外伝[】〜秘密の花園・1〜

 どれくらいの時が過ぎただろうか。石造りの回廊は冷え冷えと静まり返って
僕たちの心を沈ませる。待ち続けることの重苦しさを振り払おうと、とりとめもない
話をして時間を潰していたが、それもいつまでも続けられるものでもない。目の前の
扉は何の変哲もない木材でできているはずなのに、その向こう側を吹く風の気配すらも
こちらへ伝えてはくれない。
 不意に忠兵衛さんが立ち上がった。
「だーもうっ、我慢の限界っ!」
「便所?」
「バカかお前は。俺はこのドアを開けるっ!」
「ままま待て、斧振り上げることもないだろっ、どこの城攻めだっつの。普通に
開けろよ、鍵は開いてんだから」
「それはそうなんだけどさ……開けてもいいのか?」
 彼がためらう気持ちもわかる。本当なら勢いに任せて斧で叩き割ったほうが
楽だったろう。僕はせめてもの共犯として、彼がまだ触れられずにいる木戸に
手を添える。
「開けようぜ、そんでレッドホークさんを追いかけよう」

 闇に慣れた目に陽の光が痛い。一歩踏み出すと、深い芝に踝までが埋まる。
蔦の絡まる壁が、その庭の四方を囲んでいた。枯れ果てた薔薇のアーチ。雑草に
覆われた花壇の名残り、苔むして崩れた水路。庭のほぼ中央に、白い花を疎らに
つけた老樹が立っている。その根元に、青みをおびた岩を抱き込むように太い根を
絡めて。
 風化して脆くなった敷石に蹴つまずきながら、僕たちは老樹のそばへと引き寄せ
られるように走った。風が渡る。白い花がほろほろとその人の肩に降りかかる。
岩に体を預け、老樹の幹にもたれて眠るかのようなその姿はなぜか近寄りがたく
感じられ、数メートル手前で立ち止まってしまう。かつて彼が見せたことのない
無防備な表情に、僕たちは声をなくしていた。その足下に、季節外れに一輪の花が
咲いていた。
 濃密な草いきれの中で彼の周囲だけが無音だった。頬に、腕に、身にまとう防具に、
まだ乾ききらぬ血の汚れがやけに赤く目に刺さる。白い花弁とのコントラスト。
いっそ美しささえ感じさせる静寂。近づきたいのに足が言うことをきかない。
さっきのように駆け寄って彼の言葉を聞きたいのに。
 ざわり、と枝が風に揺れる。雲が一瞬陽の光を遮った。城内を満たす闇が再び
忍び寄ってくるような気がして、僕は必死に自分を奮い立たせ声を発する。
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Re: 【バレンタインSP】レッドホークVSちゅうじ!!
投稿日 : 2008/05/13 02:32
投稿者 ちゅうじ(代行) ID[0117]
【エデンシェイド日記外伝Z】〜2〜

サルタス、私の幻が貴方を苦しめているのなら私を忘れてください。
苦しみと向き合い耐え忍ぶことが愛ではないの。
サルタス、貴方の行いが正しいかなんて私にはわからない。
けれど留まれはしない。進まなくてはいけないの。行くべき道を決めたのは貴方だから。
サルタス、世界の全てを敵に回しても私は逃げない。
私達は時にわかりあったような錯覚に陥りながら、その曖昧な感覚で人を判断し傷つけあって生きている。

だからね、サルタス。私達はその分だけ何度でも愛し合えるの。
愛することは考えることではないし思うことでもない。
移り変わる季節のように巡り続ける気持ちをありのままに感じながら真っ直ぐに互いを信じること。
貴方を救えるのは私。私を救えるのは貴方。だからもう離れない。どこにいても私は必ず貴方を見つけてみせる。
そして貴方は知る。あの庭で二人が出逢ったのは運命や偶然ではなくて、愛そのものだということを。
貴方が限りある命のために持っていたものを失ってしまったなら、私が貴方にそれを与えてあげる・・・

頭痛と眩暈が治まり気がつくと岩の上に腰掛けていた。小鳥のさえずりと水の流れる音に驚く。
かつて庭園だったのだろう。荒れ果ててはいるが城内とは全く違う穏やかでゆったりとした生命の息吹を感じる。
この意識が望んでいることは、闇の狭間にいる彼女に誓って叶えてみせよう。
とはいえ、いざとなればこれを喰らうだけの力も残してはある。掌を見つめその記憶を手繰り寄せる。
すると足元の花が不意に咲いた。まだ春には早いはずだが。花開く喜びがあればこそ散りゆく悲しみもあるのだろう。
目覚めればそこから瞬間の奇跡が幕を開ける。だから明日を信じて安らかに眠りたい。夜が明ければ新しい一日が始まる。
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Re: 【バレンタインSP】レッドホークVSちゅうじ!!
投稿日 : 2008/05/13 02:32
投稿者 ちゅうじ(代行) ID[0117]
【エデンシェイド日記外伝Z】〜1〜

立ち上がると身体の節々が痛む。無茶をしてくれる。湖畔で見かけた二人が追いかけてくれていた。
だが思うほどに自由はきかず拳鍔を使わせるのが精一杯で、己の為すことにも眺めているしかできない。
これほどの力だとは正直みくびっていた。彼らと三度まみえたが不安そうな表情にかける言葉は思いつかず。
鍵を手にして扉へ向かうと背後から叫び声がする。他者から認められる姿が自分なのか。己の信じる姿が自分なのか。
全ての本質は形を成して捉えようとすれば失われ、矛盾のうちにしかそれを知ることはできないのかもしれない。
目の前に広がる光景に目がくらむ。城にこんな場所があったとは。再び襲う頭痛と眩暈に迷い続ける自分を託した。

吸い込まれるような感覚と明滅する景色の先に赤く燃え上がる炎が噴き出す門が見える。
それを取り囲むように群がる人々は身に訪れた不幸を嘆き、感極まった者達が次々と灼熱の門へ身を投じる。
私はじっと待った。周りに流されることなく自分の悲しみを静め、本当に大切なものを見失わないようにするために。
あの時、彼のそばにいたのに何も出来なかった自分が悔しかった。思うほどに私の元へ戻ってきて欲しい気持ちが募る。
かつて彼がこの門に来たこともある。そして私に気づかず姿を消してしまった。幾度も幾度も彼を見つけては見失い続けた。
けれど今度は違う。この身体があるのだ。いつものように門を見つめ耳を塞いでうずくまる彼を見出すと覆いかぶさるように抱きしめた。
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Re: 【バレンタインSP】レッドホークVSちゅうじ!!
投稿日 : 2008/02/28 00:14
投稿者 ちゅうじ ID[0117]
うわっAkyさん降臨Σ(゚д゚;)
怒られるかと思っt……いえいえ何でもございませんw

発起人のレッドホークさんは最近お忙しいのか
あまり出没されていませんが、そもそもこの企画は
Akyさんへの感謝を込めてのことだと言っておられました。
私も同じ気持ちです(*´ω`)
セナルスの世界、そこに集う人々の作り出す空気が
あればこそ成立したコラボだったと思います。
改めて、ありがとうございました♪
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Re: 【バレンタインSP】レッドホークVSちゅうじ!!
投稿日 : 2008/02/27 21:54
投稿者 Aky[管理人]◆BvkY6oB9fUs ID[0000]
連載企画、お疲れさまでした。
大変楽しませて頂きました。
様々な意味を込めて、とても嬉しいです。
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Re: 【バレンタインSP】レッドホークVSちゅうじ!!
投稿日 : 2008/02/21 03:04
投稿者 ちゅうじ ID[0117]
フルルさん&忠兵衛さん、レスありがとです〜♪
というか感謝なんて言葉をいただけるとは予想外ですw

最初はお互いの作風の違いがどう出るのか、
不安がなかったといえば嘘になりますが、結果として
これはこれで面白かったんではないかと思いますw
よくぞまあ私なんぞをご指名くださったもんだ。

ただ企画発表直前になって、「バレンタイン企画」と
銘打たれていることに気づき(遅っ)
「いやラブは書けませんから!」とラブストーリー部門を
丸投げしたのは私です……得手不得手ってあるよね(´・ω・)

ところで投票にアレ追加したの忠兵衛さんだろw
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Re: 【バレンタインSP】レッドホークVSちゅうじ!!
投稿日 : 2008/02/20 23:19
投稿者 忠兵衛 ID[0042]
何はともあれお二人ともお疲れさまでした!
連載期間中の一ヶ月、エデンに来るのがいつもの倍増しで楽しみでしたよ♪
結局何もお手伝いできないままで心苦しいのですが、
一読者としてレッドさん&ちゅうじさんに心からの感謝を(*・ω・)っ☆

さぁ後は投票をどうするか、悩ましい〜w
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Re: 【バレンタインSP】レッドホークVSちゅうじ!!
投稿日 : 2008/02/20 21:21
投稿者 フルル ID[0059]
遅レス失礼したします*
お二方イベントお疲れ様でした♪
それぞれ味のある文書が相互にとんとん拍子で展開されていって…
とても魅力溢れる企画でした(*ノノ)
改めて著者のお二方に敬意と感謝を。 ごちそうさまでしたっ><*

壁]ω・`)没ネタのほうも拝見しました。 笑いすぎて涙でました(ぇ
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